日   時 2023.2.26(土)午前11時30分~12時30分頃まで
場   所 京都府乙訓郡大山崎町大山崎竜光56 妙喜庵
案 内 人 妙喜庵・武田住職
参 加 人 数 9名
テ ー マ 『再び待庵へ…』



JR山崎駅
妙喜庵前で記念撮影
購入した写真集と図面
 今回の見学は10名しか申し込みできませんでしたので、有志の参加となりました。
 JR山崎駅に集合し、目の前にある妙喜庵(みょうきあん)に向かいます。
 妙喜庵は京都府乙訓郡大山崎町にある仏教寺院のことで、山号は豊興山。妙喜禅庵とも称します。この庵には、なんと言っても国宝三茶室のひとつ「待庵(たいあん)」があることにつきます。待庵は、日本最古の茶室建造物であると同時に、千利休が作ったと信じうる唯一の現存している茶室です。
 玄関先で出迎えてくださったご住職の案内に従い、お寺の中を拝観します。お堂に入るとすぐ、よく手入れされた、こぢんまりした庭が目に飛び込んできます。
 「妙喜庵書院」でご住職から、まずは妙喜庵について、さらに待庵についてくわしく説明をしていただきました。
 縁側に出て、左奥にあるのが待庵。待庵へは、庭へ降りて、3名ずつ順番に向かいます。ご住職からも説明がありましたが壁の厚さは5センチ程度、驚きです。
 この茶室は、20年以上前に見学させていただいたことがあります。その時は、茶室の中まで入れていただき、当時も撮影禁止でしたが大奥様のはからいで許可が出たが、利休に敬意を払ってご遠慮申し上げた経緯を思い出した。今回はにじり口からの見学で撮影も禁止です。しかし、にじり口からも隅々まで内部をじっくり見ることができました。
 にじり口の大きさは高さ約79㎝(約2.6尺)、横約70㎝(約2.3尺)。以後につくられたにじり口に比べると大きいとの事。床の間は間口約1.21m(約4尺)、角の柱が見えないよう、土壁に塗り込むことで空間に広がりが生まれています。天井高は約1.6m(約5.3尺)で、通常より低くつくられています。炉は約42.4㎝(1尺4寸)に規格化される前の約40.9㎝(1尺3寸5分)。
 やはり最初に作られた茶室で、それ以降かなりの変遷があったようです。床前と点前座は平天井、そのほかは掛込天井にして、部屋の中央部分に高い部分をつくっているので低圧感が解消されています。連子窓といわれる窓からのやわらかな光、天井の低さ、やはりそこに身を置けないのが残念です。
 素晴らしい空間を見ることができました。ありがとうございました。
文/新井律子

推薦図書:
「茶の本」岡倉天心著、
「武士道」新渡戸稲造著、
-今、本質のライフスタイルを求めて-
「やさしさを生きる…」暮らし方研究会編




 私と待庵との最初の出会いは高校を卒業したころだったでしょうか。山崎駅前になにやら寺のようなものがあり国宝と記されているのを見たのが最初だったように記憶しています。当時は建築を志していたわけでもなく、国宝などにも興味はなくただ「ふーん」と思った程度でした。
 数年が経ち建築を志すわけですが、当時私が在籍していた学校が主に日本の伝統建築を扱うことに特化していたこともあり、自然と日本の伝統建築に触れる機会が多く、その中で待庵に触れました。当時高槻に住んでいた私は家から近いこともあり、見学に行こうと調べたところ、応募して抽選ということを聞き足が遠のいた記憶があります。
 そして就職で東京に行き、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の倉庫や工場などを主に取り扱う中でも、心のどこかでは日本の伝統建築へのあこがれのようなものは持ち続けていました。
 その後、待庵のある大山崎町の隣町の島本町で設計事務所を構えるわけですが、関西に戻り先ず見に行きたいと思ったのが、桂離宮、聴竹居、待庵の三つでした。今改めてみると偶然なのか必然なのか全て数寄屋建築です。
 個人的には繊細な素朴さを持つ数寄屋よりも、無骨な素朴さのある農家住宅が好みなのですが、見る分には計算されつくした数寄屋は面白いといつも思います。
 そして、今回幸運な展開もあり待庵と対面するわけですが、印象は今まで見た数寄屋の中で最も質素だと感じました。
今は妙喜庵とつながっておりどこまでが原型のものであるか見解のわかれるところもあるというお話も聞きましたが、それでも質素であるということは変わらないと思います。中には入れなかったですが庭を通り、躙り口より二畳の空間を感じれば日常とは違った世界を感じるだろうことは想像に難くないです。特に書院造の荘厳な空間で生活している当時の有力者の方々にとってはなおさらそのように感じられたのではないでしょうか。
 質素さの中に繊細に工夫を凝らし、華美にならずそして退廃的でもないという”質素風”な建築を作り上げた利休の絶妙な感性の一端を見た気がします。
 そんな素晴らしい待庵ですが、個人的に1点気になるところもありました。扁額が飾ってあるわけですが、型を破り極限まで切り捨てて空間を構成していく中で装飾ともとらえられる扁額は不要ではないかと感じました。数寄屋建築に詳しい方からすると突拍子もないことを言っているのかもしれません。住職の方は必要だとおっしゃられておりましたが、個人の率直な感想です。
 とはいえ、利休の絶妙な感性の一端に触れられた今回の待庵訪問は私にとって貴重な経験となりました。
三島郡島本町在住 但見 直氏 40歳代


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